泳ぐオダジン放送局

日々フラフラっと回遊しながら気づいたことをラジオでフリートークするようにお届けします。ラジオ好き、少年ジャンプ好き、ハンバーガー好き、ヒトが好き。※本ブログの内容は、私個人の考えです。所属する組織・団体とは関係ありません

「サスティナブル・キャピタリズム」長坂真護さんの活動を知って思ったこと

9月1日から別居して実家暮らしの私は、お昼ご飯を食べながら両親が見ていたテレビに釘付けになった。

www.tv-tokyo.co.jp

テレビ東京の「エンドロールで見っけ!このNIHONJINって誰?」という番組で「長坂真護さん」という美術家を紹介する内容に衝撃を受けたのだ。

記事が長くなったので目次を貼っておく。私の記事は読まなくても良いので、ぜひ動画2つと本記事の下部にリンクを貼った長坂真護さんのWeb記事は読んでいただきたい。

e-waste(電子廃棄物)の廃棄場所アグボグブロシー(ガーナ)

まずは、Still A Black Starという長坂真護さんがガーナのアグボグブロシーで活動されている様子を記録したドキュメンタリー映画の紹介VTRを見てほしい。


www.youtube.com

恥ずかしながら、e-waste(電子廃棄物)という言葉を今日初めて知ったし、それがガーナのアグボグブロシーという場所に世界最大規模で集まっていることも初めて知った。もちろん長坂真護さんのこともだ。

長坂真護さんは、雑誌に掲載されていた写真を見てアグボグブロシーのことを初めて知り、実際に現地に赴いたそうだが、それは彼がアーティストとしての感性・衝動によって起こした行動ではないと思った。ひとりの市民として・人として行動したのではないだろうか。映像で見るだけでもそのくらいの衝撃がある。

実際、私は番組を見た後、TwitterFacebookでStill A Black Starの動画をすぐにシェアしてしまった。普段、とりあえず動画や記事だけをシェアすることも、社会課題に関することをつぶやくことも、あまりやらない私がだ。何を訴えたいのか自分の意見や考えもよくわからないままだとしても、この動画を一人でも多くの人に見てもらうことは、今、自分にすぐできることだと思い、気づいたらスマホを操作していた。そして、今これを書いている。

長坂真護さんとは、どんな人なのか

美術家としてアグボグブロシーの電子廃棄物を使ってアート作品を作ることで現地の廃棄物を減らし、アート作品を販売して得た収益を使って、アグボグブロシーにガスマスクを届けたり、学校を設立したり、ミュージアムを作って観光産業を起こしている人とテレビでは紹介されていた。これだけだと、アーティストとして活動しながら環境活動を行う人のような見え方が強いが、それだけでは無さそうだなと思い、長坂真護さんのことを調べてみた。

オフィシャルのプロフィールを見ると「MAGO CREATION株式会社 代表取締役美術家」と書いてある。以下に紹介する動画の中でご本人が話していた内容や本記事の下部にリンクを貼っておいたWeb記事の内容をざっくりまとめると、

美術家としてアブボグブロシーの電子廃棄物を使うことで

1年間に500〜800kgの廃棄物を現地から減らし

年間600点以上のアート作品を作って販売することで

アート作品を通じて世界中の人にこの問題を共有し

年間で売り上げた数億円の収益をアグボグブロシーに循環させているだけでなく

電子廃棄物が現地に流通してくることを活かして

これからアグボグブロシーに工場を建設し

現地に雇用を生み出し

プラスチックをリサイクルして

プラスチックの再生原料として社会に循環させつつ

事業として収益を上げて

文化と環境と経済を循環させようとしている人

なのだ。

サスティナブルではないからという理由で活動に関する寄付は受けないポリシーで事業運営しているそうで、社会課題を解決しながら、文化的な価値も向上しながら、ビジネス・事業として収益を上げながら取り組んでいる。それだけでなく、自身が美術家として活動ができなくなっても、この活動が持続可能になるように、新しいプロジェクトも動き始めているという。アグボグブロシーの映像や現地の状況も衝撃的だったが、それ以上に長坂真護さんのこの考え方や活動が衝撃的だった。

作品が1点1,500万円で売れた!のような紹介だけを聞いてしまうと、美術家としてのスゴさのみが強調されてしまうと感じるが、これについても動画の中では自分の作品が1,500万円で売れた理由について、自分の価値ではないと明言したうえで相対性理論を用いて解説している。

詳しくは、UNEP(国連環境計画)のイベントで、自身の取り組みについてご本人が話している様子(以下のYouTube動画)を見てもらうのが良いと思う。

「サスティナブル・キャピタリズム

「地球にいいことして稼ぎまくって何が悪いんだ」

という言葉が出てくるが、事業家としての長坂真護さんの考え方が伝わってくる。

ちなみに、検索するとYouTube上にはビジネスイベントで熱く語る長坂真護さんの様子を見ることもできるが、UNEPのイベント動画は落ち着いて話していて、じっくり聞けるのでオススメしたい。


www.youtube.com

環境問題・社会課題に直面した時の自分の思考

他人事だと表面的にしか問題を見ない

「100億円でアグボグブロシーにリサイクル工場を建てる」と聞いたときに、私が真っ先に思い浮かべたのはこんなことだった。

電子廃棄物をこれ以上現地に流れていかないようにした方が良いのでは?

自分の発想・思考がサスティナブルになれていないなと痛感してしまった。同時に、環境問題について、問題の本質をよく考えずに表面的にしか見ないで解決策を考えていて、自分の首を締めるような状態や、問題を他所に移すだけの状態に陥ってしまい、自分が思考停止していたことにも気付かされた。

例えばアグボグブロシーの問題は、現地に電子廃棄物が持ち込まれていることだと捉えて、アグボグブロシーにこれ以上電子廃棄物を持ち込まないようにしようと考えてみると・・・

  • 行き場を失った電子廃棄物をどこに捨てるのか?
  • 他の場所なら良いのか?他に持ち込んだら同じことが起きるのでは?
  • 電子廃棄物でお金を稼ぐ現地の人たちの仕事や収入はどうなる?
  • 電子廃棄物を生み出さないように捨てない、買わない、使わない、作らないってできる?

ぐぬぬぬぬ・・・となってしまう。

仕事では「表面的な対処ではなく、本質的な解決をやりましょう!」などと偉そうなことを言う場面もあるのに(言うだけじゃなくて実際に取り組んでいるときもある)、環境問題や社会課題に対して表面的にしか見ていないのは、自分の中で、やはり他人事だと思っているからなのだと思う。

番組の中で、アグボグブロシーの現地の人が「他の人は1回来たらおしまいだが、マゴは戻ってきてくれる」と言っていたのが、つまりそういうことなのだろう。長坂真護さん自身も「天命」とインタビュー記事の中で言っている。

変わりたく無い気持ちと傍観者の立ち位置

それともうひとつ、日本という国に生まれて、ありがたいことに健康で安全で便利な暮らしが出来ていて、その暮らしに満足しているし、変えたくない・変える必要がないと自分が思っているからだとも思う。

東日本大震災の後に原子力発電が問題になった時も、脱炭素・カーボンニュートラルで火力発電が問題になった時も「電気の無い生活はありえないから、しゃーないよな・・・」と思っていたし、プラスチックの海洋廃棄物が問題になった時も「プラスチック製品をゼロには出来ないよな・・・」と思っていたし、気候変動に与えるお肉の影響が問題になった時も「ハンバーガー大好きだから食べちゃうよな・・・」と思っていた。

日々の生活で、マイバックを使うとか、できるだけ余計なものを買わない・もらわないようにするとか、ゴミは分別して捨てる・リサイクルに出すとか、こういうことは人並みにやっている。何もしていないわけではないけど、何かを自分からしようとはしていない。

特に自分の仕事は電力関係・製造業・飲食業など、事業が環境問題に直接的に関係する仕事ではないからな・・・と思って、環境問題は自分の仕事とは関係ないなと他人事だと思っていたし、直接的に関係する人たちがなんとかするだろうと思って傍観していたのだと思う。海外のこととなれば、なおさら傍観の度合いは高くなってしまう。

環境問題に対して活動・行動・発信している人たちに強く賛同することもなければ、非難の言葉を浴びせることもしなかった。環境問題に関する情報に触れても、自分のこととして出来ることをやることも、どういう考えを持っているのか発信することも、そもそもじっくり考えることも調べることも見に行くこともしてこなかった。

長坂真護さんから受けた衝撃の正体

長坂真護さんは、私のような浅い問題解決でないことはもちろん、アグボグブロシーが大変なんだ!電子廃棄物が問題なんだ!と問題提起するだけでも無いし、真の問題解決を行っている人だと思う。そしてアートと環境問題という、直接的な繋がりがないように思えるもの同士を結びつけて、社会貢献ではなくサスティナブル・キャピタリズムとして事業にされている人だ。

私は経営者ではないが、企業経営者が長坂真護さんのアート作品を買っていくというのはわかる気がする。SDGsやESGを掲げてグローバルカンパニーが率先してやってきたこと、日本の大企業でも今まさに始めようとしてなかなか始められていないことを、長坂真護さんが個人で始めて既に成果を出し始めているからだ。

何がどういうタイミングで衝撃になるかわからない

企業研修の仕事をしていると、学習や行動変容を起こすための動機付け・モチベーションの向上について相談を受けることがよくある。シンプルに言うと「どうすれば火をつけられるのか?」ということだ。「凝り固まった人たちにガツンと衝撃(インパクト)を与えて欲しい」なんてちょっと過激な言い方をされることもある。

先人たちの研究の成果をお借りして、動機付けについての理論的な説明はできるし、理論的に正しいアプローチをすることはできるが、いつどこで何が衝撃になるかわからないものだなと改めて思った。同じものを見ても衝撃になる人とならない人もいるし、もしかしたら半年前の私だったら長坂真護さんのことやアグボグブロシーのことを知っても衝撃にならなかったかもしれない(たぶんなっていない)。今回は、ちょうど仕事でESGについて調べたり、実際に取り組みを考え始めたりしていたからだったのだろうなと思う。良いタイミングで知ることができてよかった。

別居して実家にいなければ見ていなかったし、お昼ご飯を両親と一緒に食べてなかったら見ていなかったし、偶然にテレ東を流していなかったら見ていなかった、そう考えていたら、Planned Happenstance Theoryを思い出してしまった。

自分の仕事や生活でこれから何を目指していくか

話を戻そう。

先ほど紹介した、UNEPのイベント動画の中で長坂真護さんが最後に話していた、この2つの言葉が印象に残っている。

消費に対してネガティブにならず、消費しまくって地球を綺麗にする、そう言う道は絶対人間はできると思う。
ペットボトルでドリンク一本飲んだだけで罪悪感を感じちゃうので、じゃなくて、そのペットボトルをもう一回ペレット(ペットボトルの原料)に戻せば良いじゃん、そういった活動をしていきましょう。

仕事ではキーワードとしてSDGs、ESG、CSVという言葉が出てくる機会が割とあって、それぞれ説明を聞いて知ってるつもりになっていたが、腹落ちしていないというか、納得感が弱いというか、自分事にはなっていなかった。

長坂真護さんの活動を見て知って、自分からこれらのキーワードに近づいてみようと思えたし、これらのキーワードを自分がどう捉えていくのか、仕事や生活の中で何をやっていったら良いのか、ヒントをもらえたように感じている。まだ具体的な何かが芽生えたわけではないが、今日感じたことを曖昧にせず、こうして可視化したことが、きっとその一歩目になったはずだ。

 

素敵な明日を

※いつもこの言葉で締めくくっているが、改めて自分にとっての素敵な明日とは何なのか考えることから始めてみよう

 

長坂真護さんのことについて紹介されているWeb記事など

以下、調べたサイトなどを記録として貼っておく。

www.magogallery.online

news.yahoo.co.jp

industry-co-creation.com

www.news24.jp

toyokeizai.net

 

note.com

www.greenpeace.org

www.huffingtonpost.jp

www.vogue.co.jp

business.nikkei.com